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文選(ぶんせん)とは、活版の工程の一つで、原稿に従って活字棚から活字を順に拾い、文選箱に納めること。採字とも〔『大辞林』(三省堂)〕。 欧文組版では活字の種類が少ないので活字ケースから活字を取り上げながら植字(ちょくじ、しょくじ)することが可能であり、これを拾い組みとよぶ。しかし、日本語(和文)や中国語の組版での拾い組みは著しく効率が悪いうえ、活字を拾うこと自体に専門的能力が要求されるため、文選と植字を別工程とした。文選工は活字を拾うことに専念し、植字工は活字を並べて約物を挟むことに専念する。 和文の組版環境において、熟練した文選工は、同じく熟練した植字工が組版を整える約1/2のスピードで文字を拾っていく。このため、植字工1名と文選工2名の組み合わせで、遅延なく工程を進行させることができる。 半分というと遅いように聞こえるが、膨大な数の和文活字を、約物やインテルを挟んで整形していく(だけの)作業の半分の時間で進めていくことができるというのは、各活字が活字棚のどこにあるかを身体で覚えている必要があるため、生半可なことではない。 欧文活字の拾い組みでは、大文字は植字台の上部に立てかけられていたケースに、小文字は植字台の下部のケースに収められていた。英語で大文字小文字の区別をケース(case)と呼び、さらに大文字のことをupper case、小文字のことをlower caseと呼ぶのはここから来ている。 宮沢賢治は「銀河鉄道の夜」で、主人公ジョバンニが文選のアルバイトをしている姿を描いている。この場面では活字をピンセットで拾っているが、活字合金は鉛を主体とした軟らかいものであるため金属製の器具で扱うと傷を付けるおそれがあるため、少なくとも日本では、多くのところでは素手で扱っていたという。(組んだあとの文字訂正の際は別。)そのため鉛を素手で扱うことになるので、作業後には充分手洗いなどをする必要がある。 校正記号には、活字の転倒を指摘する記号があるが、活字には上下の方向が分かるように小さな溝が(下となる側に)掘られており、指で触れることにより判然とする。そのため文字の転倒は拾う時ではなく、むしろ文選箱の中で、あるいはその後で発生することも多い。この校正記号の出番は後のDTP工程においては、縦組み中の横文字の使用などにおいてのみに限定されるようになり殆ど使用しなくなったため、本義から外れて「削除」の意に転用される場合もある。 この作業は熟練工の独擅場であったが、のちに鋳植機の登場や、写真植字、さらにはDTPに押されて衰微していった。 ==出典== 〔 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「文選 (出版)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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